シニアライフ徒然草

ニチイホーム鷺ノ宮の事件について

2017年11月14日、報道各社より有料老人ホーム「ニチイホーム鷺ノ宮」において、殺人事件の容疑者として元介護士の男が逮捕されたニュースが発表されました。介護業界(老人ホーム)における虐待事件・事故がここ最近大きくニュースに取り上げられる事が多くなっています。


8月22日の入浴事故報告

2017年11月22日に施設入居者の藤沢皖さん、83歳の男性がお風呂場で溺死するという事故が発生しました。
当時は今回逮捕された容疑者の元介護士、皆川久容疑者ともう一人が夜間当直を行っていましたが、皆川容疑者が藤沢さんの入浴介助中に、他の入居者からのナースコールがあり、目を離した20分間の間に、藤沢さんが浴室で溺れて死亡した、という事故がありました。

その後、警察の捜査でナースコールがあった痕跡が無い事など、不審な点が見つかり、水面下で警察が殺人事件として捜査していた模様です。

11月14日の「ニチイホーム鷺ノ宮」を運営する、ニチイケアパレスの秋山社長の記者会見によると、当時当直だった皆川容疑者との事故発生後の面談では、「大変な事をしてしまった」と涙ながらに話していたとの様子も伝えられ、勤務などにおいても遅刻や欠勤などもほとんどない職員だったとの会見内容でした。

ニチイケアパレス社より発表


現場で起きる事故や事件

最近の老人ホームの居室は、ひと昔前と比べると多くの施設が「個室」になっており、浴室も大浴場で入浴をするところもありますが、ここ数年は「個浴」個別浴槽となっています。

画像は別のニチイホームの個室浴室

個室にしても、個浴にしても、老人ホームがいくら共同生活をしている建物とはいえ、密室空間になる場合も多く、過去の老人ホームにおける事故や事件についても、その多くが個室や個浴の閉鎖された場所で起こっています。

介護にまつわる虐待事件は、ここ最近マスコミでも敏感にクローズアップされるようになりましたが、密室になってしまう瞬間では、そのような事故や事件が起こりやすい環境であるのも事実です。
老人ホームによっては、共有部の廊下やリビング・ダイニング等に見守りカメラを設置するケースは多く、個室や浴室については、プライバシーの配慮による観点からも、カメラを設置するケースは極めて少ないのが現状です。


介護職員による虐待

そもそも介護職を目指す人は、最初から虐待を目的で介護職員になるケースは考えにくいと思っています。一般的に介護職は肉体的にキツく、賃金も決して高くない、排せつ介助やおむつ交換などの仕事も行う職種を選択するという事は、やはりそれなりに高齢者に対する思い遣りや、優しい気持ちを持った人が多く、いきなり虐待に結びつく事は通常では考えにくいのですが、職場環境などによっては、それまで真面目だったと言われる介護職員が、虐待による事件を引き起こすことがあります。

今回の皆川容疑者も、勤務態度も真面目でメンタルチェックの検査にも引っかからなかったといいます。逮捕後の自供によると、殺意を抱いた原因は、何度も汚すので怒りがピークになった、という発言をしているようです。
殺害された藤沢さんは、パーキンソン病を患っており日常生活が困難な為に「ニチイホーム鷺ノ宮」に入居していたと推察されます。
一般的には老人ホームにご入居される高齢者の方には、今回の藤沢さんのようにパーキンソン病などによる身体機能の低下や、認知症などにより、安心安全に自宅で過ごせない事を理由に老人ホームにご入居される事がほとんどです。

介護職員として勤務する=日常生活を含めた身体介護の職務を行う
というのが一般的な認識であり、そのようなお仕事をしてくれる方がいるからこそ、家族は安心して大切な親御さんや親族を住まわせる事ができるのが、本来の老人ホームに求められる条件であるはずです。

しかしながら今回の事件は本来、安心・安全である老人ホームで起きたとても重大な事件です、この事件が介護の世界にもたらす影響は大きく、これからご家族を施設に預けようと考えている方々にも大きな不安を与えてしまいます。

老人ホームなどの高齢者施設で働く多くの方は、真面目に高齢者の方々に寄り添ったサービスを提供しており、そのような凶行をする職員は居ないと信じたいですが、ニチイホームだけではなく、その他の同業他社の施設で働く介護職員の方々に与える影響も、非常に大きいと考えています。


ニチイホームとは

「ニチイホーム」ブランドの老人ホームを運営するニチイケアパレスは、現在ニチイ学館のグループ会社ですが、元々は別の会社でした。
1983年、桜湯園(おうとうえん)というブランドで日本シルバーサービス株式会社が立ち上げた有料老人ホームで、老人ホーム業界の中でも老舗の一つに挙げられます。
その後は様々な要因から、2006年にグッドウィルグループの一社で、当時介護業界大手のコムスン社のグループ会社の一つとなりました。

しかしながら2007年6月にコムスンは、厚生労働省から介護サービス事業所の新規及び更新指定不許可処分を受ける事となり、介護事業の全てをグループ会社の日本シルバーサービスに移管しましたが、厚生労働省や当時の塩崎厚生労働大臣から、利用者や国民の理解を得れるものではないと指摘され、この時多くの国民に「連座制」という言葉が知らしめられたのは記憶に新しい事です。

そのような中、ニチイ学館に事業承継された桜湯園はニチイ学館のグループ会社となり、2010年にニチイケアパレスとして「ニチイホーム」というブランドに老人ホーム名称が統合されたのです。


老人ホームの紆余曲折

当時はコムスン問題とか、コムスンショックと言われるほどの社会問題となる中、時代に翻弄された旧桜湯園の老人ホームのスタッフを、しっかりとまとめていたのが、現ニチイケアパレス社長の秋山氏です。

ここまで親会社が変わり、実際に老人ホームを運営するスタッフの多くが不安にかられた事は想像に容易く、しかしながらこのように親会社が二転三転する中でも、秋山氏を中心にメンバーが一丸となってご入居者サービスを低下させる事なく、老人ホームを運営していた姿は今でも鮮明に覚えています。

昨今様々な理由で老人ホームの事業譲渡などがありますが、多くの場合その際のスタッフの流出は防ぐことは非常に厳しいのが実情ですが、現ニチイケアパレスのメンバーは非常に頑張っていたと評価できるのではないかと個人的には思っています。


社会に対する影響と説明責任

話しを戻しますが、介護職員による利用者への虐待はあってはならない事であるのは当然です。まして殺人事件ともなると、社会に与える影響も大きく、許されざる行為である事に変わりありません。今回のニチイケアパレスはじめ、老人ホーム運営各社は、常にそのリスクと背中合わせで事業を行っており、社会に対する説明責任も大きいのも事実です。

過去にも様々な虐待事件が発生していますが、事件発覚後即時に関係取引先への電話による謝罪、HP等へのリリース、即日の記者会見など、ニチイケアパレス社のとった行動について誤解を恐れずに言うならば、ニチイケアパレス社がこの問題にキチンと向き合おうとする姿勢には共感を持てると思います。

得てして隠蔽や虚偽の体質が散見される業界の中で、今後は真摯に問題に向き合う姿勢を貫き、しっかりと今後の改善も含め、介護業界におけるイメージダウンを払拭してほしいと願うばかりです。

田中 宏信
「関東有料老人ホーム紹介ンター」を運営する(株)エイジプラス東京支社 支社長。自身の両親の介護経験を活かし、同じように在宅介護でお悩みをお持ちのご相談者向けに、老人ホーム選びのアドバイスやセミナーなども行っています。

関東有料老人ホーム紹介センター 10:00〜17:00 ※土日祝は休み 北海道・東北・関東エリア 0120-605-419【通話料無料】