シニアライフ徒然草

在宅酸素でも自由に暮らせる老人ホームをさがされていたSさんのお話(その1)

以前頂いたご相談内容を紹介させて頂いたSさんの、老人ホーム入居に至った経緯を皆様の参考になればという思いでご紹介をさせて頂きます。喫煙、循環器系疾患、呼吸器疾患、等々ご本人やご家族の葛藤など、決して他人事とは思えない生(ナマ)の声を数回に分けて皆様にお届けします。


ヘビスモーカーだったSさんが禁煙に挑戦

若い時からとてもヘビースモーカーだったSさん、一番ピークの時には1日で3箱近く煙草を吸われていました。
お元気な頃のSさんの口癖は、「タバコをやめる位なら死んだ方がましだ」と普段から言われていたそうです。
サラリーマンだったSさんは、お勤めになられていた会社を定年まで勤めあげ、定年後は悠々自適のお暮しをしたいと、何となく思っておられたようです。
ただ実際はそいう思い通りにはいかなくて、定年されてしばらくはお勤めになられていた会社で嘱託社員として1年ほどお仕事を継続されて、海外出張などにもいかれていました。
ところがある日、奥様が体調を崩され、その後奥様は実は重いご病気だった事が判明し、そこから息子さんとSさんの二人三脚の介護が始まりました。 その話は、また別の機会にお話しするとして、今回はSさんのお話をしっかりとお伝えします。。。

冒頭にお話ししたように、ヘビースモーカーだったSさんは、ご病気をされた奥様に気を使って、ご自宅では奥様のそばではタバコに火をつける事は少なくなったものの、吸われていたタバコの本数自体はほんの少し減った程度でした。数年間の奥様の介護を息子さんと交代でされておられたSさんですが、お二人の介護もむなしく数年後に奥様は他界されてしまいました。
それからしばらくして、少し動くと呼吸が苦しくなってきたSさん。最初はご自身の身体をだましだまし、一人暮らしの生活をされておられました。
そんな時、かかりつけの病院を受診した際に、主治医から「肺機能が少し低下してきているようなので、タバコをやめたらどうですか」とアドバイスを受けられました。
元々お元気な頃に「タバコをやめる位なら死んだ方がマシだ」と豪語していたSさん、奥様とのとがあり、ご自身でも少し本数を減らそうかとお考えになられていたようです。
しかしながら、元々ヘビースモーカーだったSさんが、そんな簡単にタバコを制限出来るわけもなく、最終的には禁煙外来(※1)を受診するようになりました。
Sさんは当初、ニコチンガム(※2)を使用し禁煙治療を行ていましたが、ニコチンガムの味が合わず、長続きしませんでした。その後パッチ(貼り)薬なども使用していましたが、ニコチンの離脱症状を抑制することができず、ついついタバコに手が伸びていたようです。 結局最後はチャンピックッス(※3)という経口薬を使用しておられました。
しかしながら、何かあるたびにタバコに手が伸びてしまっていたSさん、主治医に受診するたびに喫煙を見破られていたようです。

※1)そもそも禁煙外来は自由診療報酬として、全額が患者負担の医療費となっていましたが、2006年4月より一定基準を満たす(本人が禁煙を望む意思がある、スクリーニングテストで一定の点数以上、などその他2項目のすべての条件を満たす)患者へ禁煙治療は一定基準の条件(病院敷地内が禁煙、禁煙治療を行っている、わかりやすく提示している、1年以上の禁煙治療の経験の医師が1名以上勤務、禁煙治療専属看護師(准看護師)1名以上、治療経過確認機器として一酸化炭素の測定器を設置)を満たしている、禁煙治療を行っている病院にて保険適用で受診することができます。

※2)元々は海外の潜水艦乗組員の喫煙を抑制するために開発されたもので、口の中で噛み歯茎に押し付け口腔内の粘膜からニコチンを摂取し、タールの健康被害を回避するために開発された。

※3)薬の有効成分がニコチン受容体と結合することで、ニコチンが受容体と結合する事を回避する経口摂取薬。

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肺がんが見つかる!

少しずつ禁煙治療が進んでいたSさんは、ある時から階段の昇り降りや、長時間の歩行の際に、息が苦しくなることを自覚し、主治医に相談し定期的に肺の検査を受けられるようになりました。
あるとき、肺活量検査とレントゲンのX線検査を受けた際に、見事なほど心肺機能が低下している結果をつきつけられたSさんは、その時に初めて自分の肺機能がかなり低下している事を本当の意味で自覚されたそうです。
またX線検査の結果、肺のレントゲン画像を読影した主治医は、右の肺に針の先ほどの小さな影を見つけました。
そしてSさんに、小さな点のような影がある事を告げ、実はこれは肺癌だけど、今までの喫煙本数や年月を考慮すると、当然肺にガンがあってもおかしくない、ただし年齢的な事を考えると、今すぐこれが大きくなって、どうにかなるという事でもないので、本気で治療を検討するなら、しっかりと治療方針を立てて治療をおこなうが、本人の意思を尊重しますと、Sさんに告げられたという事でした。
Sさんとしては、最初はかなり驚き、ガンとう言葉に恐れを抱いたそうなのですが、今すぐにとんでもない事になるわけでもないので、ご自身の中で肺癌という事を気にしないでおくことにされたそうです。


X線検査で見つかった腹部大動脈瘤

そして数か月後に改めてレントゲン撮影をおこなったSさん
その際は気にしないでおくつもりの肺ガンの状態がどうなっているのか、口では気にしていないといいながらも、少しドキドキしながら主治医に問診を受けた際に、いつになくレントゲン画像を食い入るように見ていた主治医から、まったく予想していなかった言葉を聞かされる事になります。

「肺ガンは別に大きくなっている様子もないし特に気にする事はないが、実はもっと気になることがある、それは肺の少し下の部分に影の塊がある、これはもしかすると動脈瘤かもしれない。もしこれが大動脈瘤だとすると、ここの病院では循環器の専門医がいないので、大きな病院を紹介するので、できるだけ早い段階で専門医に診てもらった方がいいと告げられました。
悩んだSさんは、身内に医療従事者がいらっしゃったので、そのお身内の方にお電話で「レントゲン撮ったら、おなかの部分にコブのようなな影があって、動脈瘤とかっていうやつかもしれない、と医者に言われた」とご相談されました。そしてひとり息子の方にも連絡をされた結果、主治医に紹介状を書いて頂き、その地域でも特に設備や専門医が充実している国立医療センターの大きな病院へ受診されました。
CT検査(※4)の結果、見事なくらいに大きな腹部大動脈瘤(※5)が見つかり、今すぐ入院して安静にし、手術を受けるように促されました。
もともと若いときから病院嫌いのSさんは、注射を打つことすらとても苦手で、ましてや外科手術などするなんて考えられません。
しかしながら、循環器の専門医は「この大きさまで瘤が大きくなっていると、いつ破れてもおかしくない、正直言って大きな咳やクシャミが原因で、瘤が破裂し体内で大出血を起こし一瞬で命を奪ってしまう可能性が高いので、一日でも早く手術をした方がいい」と強い口調でSさんに言われました。
Sさんご本人は、「俺はそれでも構わない、手術するなんて絶対に嫌だ」と、かなりの剣幕で手術を拒否されておられたそうです。
しかしながらSさんは当時既に、喫煙による事が原因とされる肺気腫(※6)の診断を受け、身体障害者手帳をお持ちになっておられたのですが、ご自身で自動車の運転もされて、どこに行くのも、ご自身の運転で行かれておられました。
Sさんの息子さんは、その事を大変気にされておられ、もしSさんが自動車運転中に腹部の大動脈瘤が敗れた場合、交通事故を引き起こし、場合によっては他人の命まで奪ってしまう事になりかねないのではないか、その事をSさんは自覚していないのではないかと、心を悩まされておられました。

息子さんとしては、「正直親父が手術を望まない気持ちも尊重はしたいと思う、しかし実の父親が、いつ死んでもおかしくない状況で何もしないのは辛い」
数年前にお母さまをご病気で亡くされていたSさんの息子さんは、願わくばたった一人の肉親であるお父様の命を助けたい、そしてまた元気になってほしい
そんな思いと、もし他人を巻き込んだ事故などで、第三者の命を奪うような事にはなってほしくない、とお考えになり、必死になって手術を拒むお父様と何度も口論になりながらも説得されました。

そして検査から二週間後、入院直前になっても嫌がるSさんに、「1か月入院すればまた自宅に戻って、自由気ままに過ごせると医師の方も言われてたんだから」と、何とか説得し入院にこぎ着けられたそうです。自宅を出る間際もSさんは、「1か月したら自宅にもどれるんだな、本当だな、絶対に戻れるんだな」と何度も何度も聞かれていたそうです。

※4)CT検査:Computed Tomographyの略でX線を照射し、身体の断面をらせん状にヘリカルスライスする事で、身体の内部がどのようになっているのかを3次元画像として立体的に造影します。

※5)腹部大動脈瘤:ほとんどの場合自覚症状が無く超音波エコー診断やCT検査で見つかります。大動脈は心臓から頸動脈、鎖骨下大動脈、腎動脈、腹部大動脈とつながり、全身に血液を送る動脈の大本になる部分ですが、その腹部の動脈に瘤ができ、破裂すると腹腔内で出血を起こしショック状態となります。

※6)肺気腫:COPDとも言います。慢性閉塞性肺疾患と言われ肺細胞が壊れ肺のガス交換機能が低下し、必要な酸素を体内に取り入れられなくなります。

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手術は成功、しかし思いがけない問題が・・・

入院して3日後、いよいよ朝8時頃から手術が行われ、Sさんは車椅子に乗って手術室に入って行かれました。
元々身体にメスを入れるのを極端に拒否されていたSさん、息子さんは開腹手術による治療ではなく、ステント(※6)を使ったステントグラフト(※7)による手術はできないのかと、主治医にご相談をされていましたが、CTの3次元画像診断の結果、思いのほか動脈瘤が大きく、また腎動脈側にもかなり浸潤している事が確認されたために、ステントグラフト手術では難しいという結論に達し、開腹手術を受ける事になったとおっしゃっておられました。
手術時間は10時間を超え、手術が終わったのは夜になっていたといいます。手術後ICU(※8)のベッドに移されたSさん、人工呼吸器のチューブが挿管されたままだったので、麻酔から覚醒せず、息子さんは手術が終わってベッドに寝かされているお父様に会われた息子さんはホッと胸をなで下ろしたと感慨深くおっしゃっておられました。
最近では通常は、手術の次の日からベッドから立ち上がり簡単なリハビリが開始されるそうなのですが、Sさんの場合は少し様子が違いました。
病院から呼び出された息子さんに、主治医からどうもSさんの肺が調子が悪く、手術は上手くいったのだけれども、手術中に人工呼吸器を使っていたのが原因で、Sさんご自身の肺が、元のように自分で自発呼吸が上手くできなくなっている、なので一旦麻酔から覚醒させたが、また麻酔をかけて人工呼吸器の管理下で呼吸管理をしています」そんな風な事をいわれたそうです。
息子さん曰く、「結局どういう事なんですか」との問いに主治医は「全く自発呼吸をしていないのではなくて、かなり弱いが肺は動いている、しかし今人工呼吸器を外す事はおそらく無理です、とはいえ今現状では挿管チューブを入れたままの呼吸管理をしているので、挿管チューブを抜いて、麻酔から覚醒させるが、しばらくはマスクタイプの呼吸器を装着して徐々に呼吸器から離脱させるプロセスが必要になります」との結論だったそうです。

※6)ステント:合金でできており、冠動脈疾患の患者の血管の中にバルーンカテーテルを使って留置すると血管の中で広がって血流を元に戻す処置が行われます。

※7)ステントグラフト:人工血管内にステントの骨格を組み込み、足の大動脈から血管を伝って動脈瘤のある部位まで挿入し、開腹手術をしないで大動脈の中に人工血管を留置します。

※8)ICU:一般的には集中治療室と言われます。


気管挿管チューブからBIPAPへの移行

気管挿管チューブからBIPAP(※9)への移行
思ったとおりSさんの肺の状態は深刻で、簡単に言うと人工呼吸を装着したおかげで、肺が本来持っている働きを人工呼吸器に頼ってしまって、本来の動きをサボりだしてしまったという事なんだそうです。
とはいえ、「ずっと口からチューブを入れたままにしておくのも、感染症のリスクやその他のリスクを考えると、出来るだけ早くチューブは抜いた方がいい、なので顔全体を覆うフェイスマスクタイプの呼吸器に変更して、少しずつ酸素の流入量を減らし呼吸器から離脱できるように促そう」という作戦でした。
しかしながら、なかなか思い通りにはならず、Sさんの肺がなかなか自分で動こうとしない、それと同時に、新鮮は酸素を送り続けていた事に起因し、通常呼吸で排出される二酸化炭素が吐きだせていない事がわかりました。
血中の二酸化炭素濃度が上がったままになっており、それが起因して意識障害がおこりSさんは意識不明の状態に陥りました。

緊急の手法として行われたのは、人工透析器を使って一旦体内の血液を排出し、血液を綺麗にして体内に戻そうという手法がとられました。
ほぼ丸一日をかけ、血液を入れ替えたSさんは、意識を少し取り戻したものの、やはりまだ危険な状態である事に代わりは無く、キチンと人工呼吸器で管理しながら身体状況を改善していくためにどうすればよいのか、という検討が医療チームでなされました。
次に息子さんが主治医から告げられたのは、マスクタイプの呼吸器を外し、気管切開(※10)をしてカニューレ(※11)を装着し、しっかりと酸素管理を行て呼吸器からの離脱までの環境を整えていきたいとの事でした、そして気管切開の手術を同時に胃ろう(※12)の増設手術でした。

※9)BIPAP:CPAPは一定の空気圧設定しかできないが、BIPAPは上限と下限の空気圧を設定し、呼吸のタイミングに合わせ空気圧を変化させる(吸うタイミングで上げる、吐くタイミングで下げる)

※10)気管切開:喉(前頸部)を切開し、気管を露出させて気管も切開してその中にカニューレを装着して人工呼吸器につなぎます。

※11)カニューレ:気管を切開し気道確保を行ったり、気道内に溜まった体液(痰など)の吸引を行う。

※12)胃ろう(胃瘻):PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomyの略)内視鏡を使い、胃の内壁に穴を開け、お腹の外からチューブを使って栄養を直接胃に入れる方法です。

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息子さんが悩まれたのは、気管切開をする事

息子さんが悩まれたのは、気管切開をする事。
確かに気管挿管チューブをずっと喉に入れたままだと、気管内部の粘膜が損傷したりする恐れがあり、しっかりと人工呼吸器で管理するのであれば、気管切開は必要なのは理解できる、しかしお父様のSさんは、日頃からお話しされる事が好きで気管切開をする事で言葉を失う事が果たしてお父様が受け入れられるのか、言葉を失う事の恐怖感にお父様が耐えられるのか、という不安を抱えておられました。

Sさん自身にその旨を伝えようも、手術の後ずっと意識が混濁しており、まだ一度もまともにお話しが出来ていない中で、気管切開をおこなってお父様の意識が覚醒した時に、声が出ないというのは、お父様がパニックになるのではないか、そんな心配が息子さんの心を痛めていました。
とはいえお父様の状態を改善する為にも、挿管チューブを抜去し気管切開を行う事は必要な事、様々な思いの中でお父様の気管切開手術を承諾され、Sさんは言葉を失うのと同時に、完全に人工呼吸器の管理下で目覚められたそうです。

そして息子さんが懸念されていた通り、麻酔の眠りと二酸化炭素の混濁から覚醒されてSさんは、声が出ない事に気づき少し混乱をされたそうです。
その後、胃ろう手術も行われ、当初予定では1カ月の入院で自宅に戻れる予定だったSさんは、しばらく自宅に戻る事は叶わないと悟り、後になって息子さんを酷く責められました。
手術から3週間が過ぎた日、SさんはICUからCCU(※13)にベッドを移されました。 震える手で筆談をしながら、Sさんは少しずつ元気を取り戻すものの、気管切開をして人工呼吸器を装着しているので、定期的な気管支内の喀痰吸引が必要になり、ベッドでの寝たきり生活がこの病室で3カ月以上続きました。
今回Sさんが入院された病院は国立医療センターで、分類上は急性期病院(※14)とされており、本来急性期病院の場合は2週間程度の入院で他病院へ転院するのが普通とされていますが、Sさんの場合は他の病院に転院をさせる事ができる状態ではなかったので、かなり異例な事ではあったようですが、結局は入院から約4か月間以上入院をされておられました。
その後は入院前に受診をしていた市民病院への転院を受け入れて頂く事ができたので、病院の救急車で搬送され無事に転院。 ただしこの時点でもまだ気管切開し、人工呼吸器に繋がれたままの状態でした。

(次回その2へ)

※13)CCU:(coronary care unit の略 重症の心臓血管疾患などの循環器系患者を対象とする集中治療室)

※14)急性期病院:緊急で重篤な患者の手術や検査を専門的に行う病院

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記事 関東有料老人ホーム紹介センター 田中

田中 宏信
「関東有料老人ホーム紹介ンター」を運営する(株)エイジプラス東京支社 支社長。自身の両親の介護経験を活かし、同じように在宅介護でお悩みをお持ちのご相談者向けに、老人ホーム選びのアドバイスやセミナーなども行っています。

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